静岡胎盤早期剥離母子死亡2

カテゴリー: ニュースから

昨日のエントリで書いた周産期母子死亡だけど、産経新聞によれば司法解剖になったらしい。

帝王切開受けた妊婦死亡 静岡県警が司法解剖〜MSN産経ニュース〜
2008.5.2 12:59
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080502/crm0805021259019-n1.htm
Web魚拓
http://s02.megalodon.jp/2008-0502-1317-04/sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080502/crm0805021259019-n1.htm

 静岡厚生病院(静岡市葵区)は2日、陣痛を訴え入院した静岡市内の妊婦(24)が先月27日、帝王切開の手術後に死亡したと発表した。同病院では「死亡に直結する医療ミスはなかった」としているが、2日までに異状死として県警に届け出た。県警が司法解剖して死因を調べている。

 病院によると、妊婦は平成19年9月に初診を受け、妊娠40週だった先月27日朝、陣痛を訴え入院。医師の診察で胎児の心拍がなく、胎盤のはく離が起きていたため、同日午前9時すぎ、帝王切開手術を行い、胎児が死亡しているのを確認した。妊婦は手術中にけいれんを起こし、意識レベルが低下。手術後の同日午後1時40分ごろ、死亡した。

 玉内登志雄院長は「患者が亡くなったことを遺族におわびしたい」としている。


相変わらず産経の記事ってひどいな。

同病院では「死亡に直結する医療ミスはなかった」としているが、2日までに異状死として県警に届け出た。県警が司法解剖して死因を調べている。


これじゃ病院が医療ミスを隠そうとしているみたいじゃね〜かよ。昨日のエントリーでもちょっと触れたけど、胎盤早期剥離は病気なのにな。産経新聞のこの記事書いた記者はもっと勉強しろっての。つか、俺に勉強しろって言われている時点で終わってるけどな。

しょうがね〜から昨日のエントリーでも引用した静岡新聞の記事から事実関係だけ拾ってみるとすっか。

4月25日の診察では母子ともに異常はなかった
○分娩予定日を3日すぎた4月27日午前0時ごろ、陣痛が始まったと同病院に電話連絡
○対応した看護師、助産師は問題がないと判断し、自宅待機を伝え
○妊婦は約6時間後に再度電話で訴えて来院
○同日午前8時すぎに医師が診察したところ、既に胎児の心拍は無かった
胎盤早期剥離が確認され
緊急帝王切開を行い
○子宮内から死亡した胎児を取り出し
母体は3リットルを超える大量の出血があり、
輸血を含む5リットル以上の輸液で対処したが、
けいれんや意識レベルの低下が起こり、
○妊婦は同日午後1時40分ごろ死亡


まず、妊婦は陣痛発来後、病院に電話連絡してる。この時点で予定日から3日過ぎてるが、3日の超過ぐらいなら特別異常なことじゃない。一応、予定日から14日の超過までは正期産ということになってる。んで、その電話は看護師と助産師で対応している。産科の看護師と助産師の対応なので、陣痛の間隔と性状、出血がないかどうか、破水していないかどうかなど、具体的に状態を電話で聞いたはずだ。ここで問題なしと判断し、自宅待機を指示している。普通は妊娠経過に異常がなければ、分娩が始まるまで病院に入院してたりはしないからこれも問題ない。分娩の開始は普通、陣痛の周期が10分以内、頻度が1時間6回以上とされている。たとえ陣痛があっても、その間隔が長い間は分娩開始にならないので、自宅で待つことも全くおかしくない

この辺のことはサイト「産婦人科の基礎知識」に詳しく書いてある。
産婦人科の基礎知識〜分娩所要時間〜
http://www.san-kiso.com/sannka/jikann.html

その後、約6時間後に再度電話で訴えて来院している。最初に看護師、助産師が自宅待機を指示したとき、陣痛が10分間隔になったり、痛みが突然強くなったり、出血があったり、破水したりしたときなど、具体的に病院に再度連絡すべき場合を指示しているだろうから、そのうちのどれかがあったから連絡して来院したのだろう。来院は救急車ではないようなので、大量に出血したとか、陣痛とは違う強い痛みが発生したとかではなかっただろう。一番考えやすいのは単純に陣痛が10分間隔になったから電話連絡して来院した、ってとこだろう。

その後、午前8時すぎに医師が診察したところ、既に胎児の心拍は無かったとある。このときに胎盤早期剥離も確認されている。4月25日には異常なしなので、前置胎盤ではなく、常位胎盤早期剥離ってことになる。結果から考えると、これより前の時点のどこかで常位胎盤早期剥離が起こり、胎児が死亡したことになる。じゃあ、常位胎盤早期剥離は予測あるいは早期発見はできなかったのだろうか

常位胎盤早期剥離についてはブログ「ある産婦人科医のひとりごと」の2006/01/24のエントリーに詳説されているので、こちらも見てくれ。
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/01/post_754a.html
ここから一部引用する。

常位胎盤早期剥離は、正常の分娩経過中に病院内で突然おこることもあれば、まだ臨月にもなっていない時期に自宅で突然おこることもあります
発症直後に胎児死亡となる例もめずらしくありません
胎盤後血腫のために母体の血液の状態が変化してDICという状態になると、血が止まらなくなり、出血のために母体の生命が奪われることもあります
常位胎盤早期剥離の典型的な自覚症状は、動けなくなるぐらいに激烈な下腹痛で、お腹は板のように硬くなります。
性器出血がみられることもあります
症状が典型的でない場合も多いです。
常位胎盤早期剥離は母児の命にかかわる非常にこわい病気ですが、いつ誰におこるのかは全く予想ができません
いかに医学が進歩したとはいえ、この病気の発症を予測することは未だに不可能です。


つまり、予測したり早期発見するのは不可能ってことだ。もちろん、たまたま早期に見つけられるってことはあるだろう。例えば出血が見られたり、動けなくなるぐらいに激烈な下腹痛があったりした場合がそれだ。でも、それは必ず早期発見できるってことじゃない。むしろ、早期発見できることの方が珍しいんじゃないか?

こうした病気で不幸な結果になるのは産科医のせいなのか?違うだろ。オレは病気のせいだって思うけどな。そう思わないヤツは、医者にかかればどんな病気でも治るってカンチガイしてるんだろうな。そんなことあり得ないのにな。

ちっ、今日のエントリは長くなり過ぎちまった。実は司法解剖に関しても書きたいことがあるんだけどな。それはまた次回ってことで。
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